ごうがふかいひとたち

 

ごうがふかいひとたち

 

オー氏は悩んでいた。

「どうすればこの性欲を満たすことができるのだろう」

オー氏はたいそうなお金持ちであり、周囲の人との付き合いもよく、何一つ不自由のない生活を送っていると思われていたが、とんでもない変態であった。

そんなオー氏のもとにある報せが舞い降りた。

なんでもどんな性癖でも受け入れてくれるデリバリーヘルスをやっているピー氏という人物がいるらしい。

「物は試しだ、ひとつお願いしてみよう」

オー氏はお金持ちゆえに慎重な性格であり、最初はそこまで特殊ではない性癖で注文した。

「首絞めプレイをお願いしたいのだが」

「かしこまりました」

オー氏の元に美少女が訪れ、オー氏は心ゆくまで楽しんだ。

しかし、力の入りすぎたオー氏は不幸にも美少女を殺めてしまう。

「これはまずいことになったぞ」

オー氏は変態ではあったが、常識は持ち合わせている大人だったため、ピー氏にしっかりと謝罪をすることにした。

「申し訳ないのだが、そちらの商品を傷つけてしまった。いや、正確に言うと首絞めの最中に殺してしまったのが」

「承知いたしました。それは残念なことですが、首絞めプレイにはそういったことはつきものです。なに、私の方でしっかりと処理させていただきます」

黒づくめの男がオー氏の元を訪れ、亡骸を引き取っていき、特に追加の料金等も発生しなかった。

それからオー氏は1週間、2週間と不安な日々を過ごしたが特に事件になる様子もない。

オー氏はピー氏をすっかり信用し、それから毎日のように特殊なデリバリーを頼み続けた。

ある日、オー氏はふと思った。

「どうして彼はどんな商品でも用意することができ、どんな問題が起きても対応できるのだろう」

オー氏は世界中のお金持ちにありがちな、気になったら確かめないといけない病気を持っていたため、思い切って尋ねてみることにした。

「やあ、ピー氏。いつも君には満足させてもらっているよ。」

「ありがとうございます。ところで、今日はどんな商品をご用意いたしますか。」

「いや、今日は商品を頼みたいわけではないんだ。君のビジネスの秘密を知りたいんだ」

ピー氏は少し言い淀む。

だがオー氏はたいそうなお金持ちであるために、人の心を開く術も身につけていた。

「なに、君も僕の特殊な性癖を知っているだろう。僕もそれが世界にばら撒かれるのはごめんだ、もし僕が君の秘密を誰かに言ったら僕の性癖を世界中にばら撒いてもらっても構わない。」

そこまでおっしゃるのであれば。」

とピー氏はわりとあっさりと口を開き、その秘密を語り出した。

「簡単に言ってしまいますと、私の仕事はお客様とお客様を繋ぐお仕事なのです。お客様もご存知の通り、私の顧客様は皆特殊な性癖をお持ちです。貴方が以前私にご依頼された欠損の美少女は、つまり少女の腕を切り落としたいという性癖をお持ちのお客様から生じた商品を貴方にお届けしただけに過ぎません。」

オー氏は誰もが損をしないシステムを作り出したこの商人にいたく感心した。

だが同時に一つだけ疑問も残った。

「だがそれでは商品はどうやって入荷するのだろう。それも客の性癖なのか。」

「それは私の性癖が”居なくなっても困らない少女を拐い、教育すること”でございますので。私の性癖を生かそうと思い、この仕事を始めたわけです。」

好きなことをして生きる、このピー氏と言う男以上に似合う人物はなかなかいないだろう。

 

 

宇宙からのふたなり

 

オー氏はたいそうな商才があるお金持ちで、その上新しいもの好きだった。

民間での初の宇宙船の購入権は当然オー氏のものとなり、オー氏の思うがままの航路を進めるようになにひとつ文句を言わない優秀な宙夫も雇うことができた。

誰もが羨むオー氏だったが、オー氏はまだ満足していなかった。

ふたなりとセックスがしたい。」

オー氏はたいそうなお金持ちだったが、たいそうな変態でもあったのだ。

オー氏が宇宙旅行をしようと思ったのもこの変態性癖のためであった。

宇宙の何処かにふたなり星があるという眉唾物の噂を信じ込み、オー氏は大枚を叩いて宇宙船を手に入れたのだ。

宇宙旅行をはじめ一ヶ月、二ヶ月と時が経ち、流石のオー氏も

ふたなり星は存在しないのでないか。」

と疑い始めた。

そんなある日、宇宙船に通信が入った。

「こちらふたなり星、旅の者とお見受けしたが入星を希望されるか。」

オー氏は何一つ文句を言わない宙夫とひとしきり喜びを分かち合い、ふたなり星に降り立った。

ふたなり星はその名の通り住人たちは見渡す限り皆ふたなりで、噂は果たして真実となった。

ただしオー氏の目論見と異なり、ふたなり星の住民は皆一様に男ふたなりである。

オー氏は心の底からマグマのように湧き出してくる怒りを覚え、そこいらの水たまりよりもはるかに浅い自分の思慮を憎んだが、旅人という立場上怒りを抑え、案内されるがままに星を観光した後地球に帰る準備を始めた。

帰り支度の途中、なにやら気まずそうにオー氏に近寄ってくる1人のふたなり星人の姿があった。

「旅のお方、貴方はとても友好的で尊敬に値する人物です。もしよろしければ一つお願いをしたいのですが。」

「私に叶えられることであればお力になりたいところですが、なにぶん私は自分の星に帰るところですので、なにも力になれないと思いますが。」

「いえ、帰るからこそちょうどよいのです。お恥ずかしい話になるのですが、この子たちを引き取っていただけませんか。」

そう言った男が手を引いていたのは、オー氏が夢にまで見た双子の褐色ロリふたなりであった。

「私たちの星ではこう言った失敗作を生んでしまうと、親は罰を受け、子は処分されてしまうのです。とは言え自分たちの子供ですので自ら手をかけるのはどうにも辛い。そこでなんのしがらみもない貴方にこの子たちを引き取って欲しいのです。」

「なるほど、わかりました。私がこの子たちを私の星に連れて行きましょう。」

オー氏は喜んで双子のロリふたなりを地球に連れ帰ることにした。

地球に帰る途中に気付いたのだが、ふたなり星人は地球人に比べて性欲旺盛である。

最初のうちはオー氏も喜んで相手をしていたのだが、こう求められるとオー氏の体力も保たなくなってくる。

そうしてオー氏が相手をしなくなると、ふたなり星人同士で生殖行為を始めた。

地球への帰路が見えてきたある日、ふたなりは子供を産んだ。

なんとも可愛らしいふたなりでオー氏はたいそう喜んだ。

喜ぶと同時に根っからの商人であるオー氏は閃いた。

ふたなりを求める地球人にこの子たちを売ったらどうだろうか。」

オー氏は地球に着くやいなやふたなり牧場を作り、ふたなりをどんどん増やしていった。

そしてやはり地球人もふたなりを求めており、飛ぶようにふたなりは売れていった。

たまに生まれる成功品は、ある程度数がたまるとふたなり星に連れて行き、これまた飛ぶように売れた。

こうしてふたなり長者となったオー氏だったが、その頃地球ではふたなりにも人権を持たせるべきだと騒ぐ輩が現れ始めた。

だが、もうオー氏には関係ないのである。

オー氏はある程度顔が知れるようになったふたなり星で、お気に入りの失敗作に囲まれ幸せな生活を送り続けたのだ。

どの世界でも切り捨てる物は切り捨て、自分を高く評価してくれるところで生き続ける者だけが成功者と呼ばれるのだ。

 

 

しっぱいロボット

 

オー氏は天才ロボット学者だった。たくさんの便利なロボットを作り、たくさんの人に感謝された。

だが、オー氏にもどうしても作れない物があった。

それはエッチなロボットである。

求められている以上、作りたくなるのがオー氏の性分であった。

だがどうしてもエッチなロボットを作ることができない。

そこでオー氏はそれについて学ぶために、ロボット作りについてはイマイチだが、エッチなロボットを作ることに関してだけはピカイチと呼ばれているピー氏からエッチなロボットを借りることにした。

「やあ、ピー氏。突然だが、私も人々に求められているエッチなロボットを作りたいのだ。そこでエッチなロボットの第一人者である君のロボットを一つ貸して欲しいのだ。」

「高名なオー氏からの頼み事を私などが断れるはずもありません。一番人気のこのロボットをお貸しいたします。どうぞ研究なさってください。」

オー氏はロボットを持ち帰るとすぐに研究を始めた。

だがどうにも電源が見つからない。

そうこうして全身を調べていると、どうやら首を絞めている時だけ作動することがわかった。

「ははぁ、性事情には明るくなかったが、どうやら首絞めセックスが流行のようだ。」

オー氏はひとしきり首絞めセックスを楽しんだあと、しっかりとエッチなロボットについて研究し、ピー氏の元にロボットを返しにいった。

「やぁ、ピー氏。とても勉強になった、心から感謝する。」

「いや、そんなことは。」

「だがしかし、最近の性事情はこんなことになっているのか。私が不勉強なのもあるが、これはどうにも衝撃的だ。」

「はぁ、私もそう思うのですが、最近の人たちはどうにも手を繋いでいないとセックスを楽しめないようでして。」

オー氏はすっかり困ってしまった。

これでは手を繋いでセックスするロボットが流行っているのか、首絞めセックスをするロボか流行っているのかわからないし、何より自分は首絞めの方しか作れない。

困ってしまったオー氏は、今まで通り便利なロボットを作り続け、ごくたまに自分用の首絞めロボットを作る生活を送った。

一旦世界の常識と思っていたものが、自分だけのお気に入りとわかるとなにやら気恥ずかしくなってしまうのは天才でも凡人でも変わらないものである。

 

 

おーい、おなほーる

 

オー氏はその日性欲が爆発していた。

「今日は絶対オナホールを買って帰るぞ。」

そう心に決め、おなほ屋に向かう途中なにやら露天商に目を引かれた。

どうやらこの露天商は今日び珍しくオナホを扱っているようだ。

「やあ、君。このオナホールはどんなものなんだい。」

「お客様、お目が高いですね。こちらのオナホールは世界中のどんな人でも非常に相性がいいオナホールになっています。」

「そんなものあるわけないだろう。セールストークだからって嘘をつくとは情けないぞ。」

「そんなことはございません。そこまで言うのであれば、こちらを差し上げます。今夜お使いいただいてお気に召しましたら明日にでも私にお気持ちをいただければ結構です。」

オー氏はしめしめと思い、オナホールを受け取り、急ぎ自宅に帰りオナホールを試すことにした。

少し開いて見てみると、どうやらヒダ系のようである。

オー氏はローションを注ぎ、恐る恐る挿入した。

果たして男が言う通り非常に相性がよく、オー氏はその夜3回もオナニーをしてしまった。

「彼には失礼なことを言ってしまったな。明日謝罪をしてきちんとお代を払おう。」

オー氏はシャワールームに行き、しっかりとオナホを洗浄、乾燥しベッドに入った。

今日はいい日だと思いながら次第にまどろみはじめ、深い眠りにつきそうだと思った時、ふとアナルが開かれ、誰かに覗かれているような気がした。

 

 

このショート・ショートを敬愛する星先生に捧げる。

いや、捧げられても困るとは思うけど。